手繰り寄せるは夜の調べ


 緑の香りが甘く闇に立ち込める。
 奥の自室の間、夕餉の後、溜まりに溜まった執務の書を片付けると、小十郎は立ち上がり、縁側へと進んだ。
 障子戸を開け放つと、微かに流れ込む緑の香を含む風に、覚束無い明かりが室内にゆらりと揺れる。
 空には半分程の月が架かり、青白い光に彩られた世界は、風の調べが微かに流れているのみの筈だったが―
「…随分、遅いじゃねえか」
 微かに紛れる、自然の風の中に混ざる異音を小十郎は鼓膜で捕らえると、薄い笑みが唇を過ぎった。
「賭けの戦利品として楽しんで貰うのなら、それなりに時間を作った方が良いと思ってね。どうやら本日は旦那の方も仕事が片付いたらしい」
 声の主の姿は未だ見えないが、夜の中から響いてくる声は酷く明確に、小十郎に入る。
「どちらが堪能するんだろうな。勝負を引いたのは―態とじゃねえのか?」
 過日の満月の夜。
 この場所で賭け将棋を声の主と行った。
 相手の駒の動きは、小十郎の駒を刺す事の出来るに十分な配置だったが、相手はそれをせずに、一手を留め、隙を生んだ。
「態とだとしたら、旦那の不興を買うかい?」
「ああいや、そうまでして、テメェが次の約を取り付けたいと思ったんだったら…面白いと思っただけだ」
 風が凪いで目の前の闇が揺らぐ。何かの色彩が剥がれた、と感じた時には、一人の迷彩の忍び装束を纏う男が片膝を付いた姿で現れた。
 鉤爪の指の合間には、闇色の蟠りが握りこまれている。
 半首の金属に囲われた白い顔が小十郎を見上げると、形の良い薄い唇が笑みに綻び
「その辺りの絡繰りは旦那はとっくにお見通しだと思ったんだけれどね」
「敢えて口に音に結んで伝えられると嬉しいってものもある。俺を楽しませてくれるんじゃねえのか?」
 滑らかな所作で忍び装束の男が立ち上がると、殆ど音のしない足の交差で縁側に立つ小十郎へと近づく。
「忍びの言葉と声を旦那は強請る…ね。真か嘘かも解らない言葉を」
「嘘も真もねえだろう。テメェの口から出るって事だけは本当だ。まあ…他にも強請るがな。上がれ、猿飛」
 小十郎の許しが出ると、促される侭に佐助は下履きを脱ぐと、室内へと進む。
 自室の事もあり、小十郎は相変わらずの長着だ。
 空気が微かに乱れ、室内の灯りが揺れる。
「その武装が邪魔だな…取っても良いか?」
 小十郎が問う声を掛けながら、足を止め、佐助の冷えた半首の金属に指を伸ばす。
「今宵は旦那のお気に召す侭に…。武田の忍びの戦装束に、伊達の軍師殿は興味がおありかい?忍び嫌いという噂は聞いた事があるけれど」
 時として敵方にもなる相手の武器の技術を知りたいと望むのは無理からぬ事かもしれないと、佐助の声には問う色が混じる。
「俺が嫌いなのは、自らを草だの石だの言う忍びのあり方だ。それに―興の向くものを暴きたいってのはあるだろう?」
 佐助は、己の武器ともいえる装いに触れる手を拒む事無く、長く節の目立つ小十郎の指に、白い指を重ね、身を囲う金属の留め具へと一つ、又一つ導く。
 顔を囲う金属を外すと、淡い色の髪が、佐助の白い頬へと幾筋か落ち、切れ長の目元、細い鼻梁と薄い唇と涼しげな容貌が更に露になる。
「我侭で強欲なお人だ。生まれも育ちも無いに等しい根無し草に「人」であるってのを望むのはある意味酷」
「そんな酷い男に一晩付き合うんだ―覚悟しておけ」
 上半身を囲う外套、身を守る鉄の帷子は、一つ一つ、小十郎が考えるよりも呆気なく外れ、畳の上に鈍い音を微かに響かせ落ちる。
 特に迷彩の外套の裏側にはびっしりと暗器めいた武器や小十郎の良く知らない細工ものが仕込まれており、予想以上に重かった。
「これだけの物を仕込んで…よく動いていられるな」
 半ば呆れた感を含んだ小十郎の声が漏れる頃には、佐助の身は黒の腹掛けと股引一枚の姿へと変わっていた。
 不安定な炎の輝きが緩やかな陰影を佐助の身へと落とす。
 佐助の身は細い体だったが、隙の無い筋に手足の長い骨格は囲われており、決して貧弱ではない。
 だが、これだけの武器を常に持つのは不似合いとも一見映る。
「仕込むばかりじゃなくて、その辺りにあるものでも、急所さえ解っていれば武器にはなるね。筆の一本、帯一つ。筆なら眼や耳に押し込めば、脳を内から壊せるし、帯は言わずもがな。でも…戦場では何が起こるか解らないし、しかもこんなご時勢だからね。だから自然普段の持ち物も多くなる」
「物騒な事を言うな…。だが、この城内にも断りも無く忍べるテメェにとっては誰かの寝首をかくのも簡単な事なんだろうな。立ち話も何だ―座れ」
 畳の上に座を促されると佐助は目礼を落とし、腰を落ち着かせる。
「そうかもしれないね。闇討ちなんてのは結構簡単に出来る。唯、それをしないのは、所詮、忍びは一つの武器でしかないって事。上の命が無ければ動けない。それに―世の中を動かすのは、人民とそれが従う国主だ。騙し討ちをして国を乗っ取った所で、人々の心は添うことは無い」
 軽く肩を竦めながら、佐助は謡うように言葉を紡ぐ。
「戦という場で、力を示し、勝つ事で、民の心は従い、動く、か―」
「結局迷う心を持つ人は武器を手放す事なんて出来ない訳だからね。戦場こそ大きな舞台」
 どこか諦めめいた感のある清澄さで佐助は言う。
 武器である己の役割を十分に知っているからこその悟りと、戦と武器を捨てる事の出来ない世の人の性を、飲み込みながら、そこにある姿なのかもしれないと、佐助の顔を小十郎は見る。
 それは強さなのか、哀しさなのか。
「舞台か。そういえばテメェの動きはどこか舞いに似ているな。風のように軽やかな癖に止めがきっちり入る」
 佐助に対峙するように腰を落とそうとした小十郎の動きが止まり、緩く背を曲げ、改めて仔細に佐助の姿形を見る。
「猿楽、白拍子…刹那の日々の中に見る事の無い夢を自分の身で購って、全国行脚の根無し草。だからこそ―道々で聞く話も広く拾える。忍びの情報を掴む方法にはそんな話もあるって話」
「テメェも謡や舞の素養はあるのか?」
 綺麗な男だ、と今は口に出さず、佐助の顔を見て小十郎は思う。
 道化めいた言葉と浮ついた仕草で、普段は紛らわせているが、人好きのする甘い雰囲気と、誘われるような艶がある。
「まあね。年端も行かないガキの頃から、芸事から武芸までありとあらゆる事を仕込まれていますよ。唯、横笛はちょっと苦手だったかな。俺の唇だと薄いからね。良い音が作れない。旦那の唇なら厚みがあって良い音が作れそうだ」
 不意に浮いた佐助の指先が淡く小十郎のくっきりとした陰影の口元に触れる。
 下唇の形を緩く指と眼の動きで佐助はなぞると 視線を緩やかに持ち上げる。
 薄い色合いの佐助の眼差しが 小十郎の黒い闇色の眼差しとかち合う。
「笛よりも、もっと良い音色が聞けそうな物が目の前にあるな」
 小十郎の目の色が熱を帯び、射るように強く佐助の眼へと注がれると、長いが関節の目立つ小十郎の無骨な指が、佐助の細い顎へと掛けられる。
 膝を曲げ、身の高低を無くした互いの面差しを呼気の気配すら感じ取られる程に近づける。
「試してみるかい?」
 掠れた低い吐息めいた佐助の囁きが小十郎の唇に、音と熱を伝えてくる。
 応えは―言葉では無かった。
 視線を緩く伏せ、横に凪いだ首の動きで、小十郎は佐助の唇に唇を重ね合わせた。
 最初は皮膚の表面だけを触れ合うだけの交接。
 互いの柔らかな薄い皮膚の上で唇の形を確かめる。
 佐助の温度の低い皮膚の上に、己の唇の温度を馴染ませ広げながら、薄く開いた唇で佐助の唇を食み始める。
 表面をなぞるだけの小十郎の唇がその奥を欲するような動きへと変わると、佐助の薄い饒舌な唇が、無音の侭に開き、小十郎の唇と食み合わせる動きを仕掛けてくる。
 柔らかな佐助の呼気の温度と気配を吸いながら、唇へと圧を深めていけば、濡れて鮮やかな息の熱が通い合い、湿った音が落ちる。
 唇の合わせ目から、舌を佐助の唇の上へと辿り、湿った線を付けると、深く咥内へと舌を差込み、佐助の薄い舌を掬い上げ絡め取る。
 ざらついた舌の表面を互いに舌を抜き差しし、擦り合わせながら、混ぜ合わせた唾液を小十郎は啜った。
 喉を打たせ、飲み込む佐助の唾液は煙草を嗜む遊女のそれよりも遥かに甘い。
 空の腕は佐助の背へと流れ、己の腕の囲いで逃がすまいと緩く曲げた腕へと力が篭る。
 顎へと掛けていた手は、佐助の背後へと伸び、黒の腹掛けの紐を解く。
 浮いた黒の布地と肌の合間に手を滑らせ、ひらり、と上体を覆っていた布が落ちると、佐助が微かに震えるのが掌を通して伝わってくる。
 薄い視野で佐助の表情を攫いながら、熱の篭った息と共に唇を浅く浮かせ
「寒いか?」
 それだけを短く聞きながら、佐助の己よりも低い体温を纏う皮膚へと掌の熱を伝える。
 削げた腹平から、しなやかな筋に覆われた胸元へと手が動く。
 手の熱で佐助の痩躯を包み取り這わせていくと、どちらの唾液とも付かず濡らされた唇からしどけない息を流しながら、佐助は小十郎を見上げた。
 笑みに細めた視線を向け
「…直ぐに熱くなる。旦那が…暖めてくれるんじゃないのか?」
 微かに喉奥に笑いを響かせながら、両腕を小十郎の首へと佐助は回す。
「違いねえ…」
 薄い佐助の下唇へとしゃぶりつくと、佐助の身を両腕で掬い上げ奥へと伸べられた布団へと向かう。
 抱き上げた男の体躯は小十郎が考えていた以上に軽く、僅かに片眉が上がる。
「軽い身体だな。壊しやしねえかと不安にもなるが…」
 真綿を包んだ布の上、佐助の身を横たえると、覆いかぶさり、佐助の耳朶へと軽く歯を立てる。
 黒い股引の拘束を緩めながら、耳殻へとねっとりと舌を這わせる。
 長着の合間から佐助の下肢を膝で割ると、膝蓋で佐助の足の付け根にある欲の芯を擦る。
 布越しに伝わるもどかしい刺激と耳に伝わる湿った熱に身を震わせながら、柔らかい甘い息を佐助は逃す。
「…あ…ッ…今宵一晩は…旦那のものだ…好きにしていい…」
「好きにして欲しい、じゃねえのか?」
 佐助の内心を探るように低い声を耳孔へと響かせ、耳裏から首筋へと皮膚を唇で味わいながら、首筋の脈が高く打つ場所へと小十郎は歯列を沈める。
 急所の一つに伝わる痛みに、怖いと感じるよりも、甘い戦慄が佐助の背筋へと這い上がり、反射的に両膝が布団の上から浮き上がる。
 躊躇いか、それとも、微かな抵抗か―
 獲物を縫い止めるように、犬歯を白い皮膚に沈ませながら、身を浮かせ、下肢を覆う衣服の合間へと小十郎は手を滑り込ませる。
 熱を持ち、弾力を伝えてくる佐助の性器を掴み、緩々と扱き上げ、親指で欲の吹き口を細かく擦り上げる。
 ざらついた指紋で尿道の粘膜を刺激すると、とろりと透明な体液が性器の尖端から溢れてくる。
「…ン…っ…好きに…してほしい。好きに…されたい…」
 吐息に掠れ、小さな声で佐助は呟く。
 身体へと立てていた歯を浮かせ、見えた佐助の表情は、僅かに眉を顰め、泣き出しそうにも見えた。
「良い子だ…。テメェの強請る声を聞かせろ…」
 股引の入り口を掴むと、下帯毎、佐助の衣服を長い足から引き抜く。
 全てを剥ぎ取った佐助の身を眼の中に収める。
 頼りない燭台の火の輝きが、微かに上気した白い肌を炙るように照らし出す。
 無駄の無い、削ぎ落とされた身体に、己の身を重ねようとすると、己の長着の布地を佐助が掴む。
「…旦那の…体を見せて…」
「…解った…」
 幾分肌蹴かけていた長着と下帯を小十郎は解くと、佐助のしなやかな痩躯の上に、己の骨太の身のある体躯を重ねる。
 肌と肌が重なると、佐助の両腕が小十郎の背へと渡される。
「…良い男だけど、ホント…酷い男だよね…人の隠している本音を聞きたがる…」
 多少恨めしげに佐助は小十郎の顔を見て
「…見せたくないと思っているものほど、見たいと思う性分だからな…」
 低く笑いながら佐助の耳朶へと甘く噛む。
 耳は弱いらしく、じれったそうに身を捩る動きを愛でるように眼を細め
「耳が感じるんだな…」
 舌で耳を舐めながら、五指の筒で佐助の性器を捉え、扱き上げる。
 身体に甘く走る熱を堪える為に、背中へと強く立てられる細い佐助の指は自らの身が落ちるのを留めるようにも似て。
「…旦那の低い声は腰にクるんだよ…」
 若干恨みが増し気に見つめてくる佐助の眼は、欲の熱に濡れていた。
 五指の凹凸で性器の粘膜を擦り上げていくと、微かなあえぎ声を佐助が流し始める。
 張り出した雁の窪みに指を回し、親指の腹で尖端を捏ね上げる。
 耳から首へと通る唇は、先程の追い立てる動きとは異なり、慰撫にも似た柔らかなもの。
 微かに歯の痕の残る頚動脈の皮膚の上に、労わるように舌を這わせると、手の中の佐助の性器がどくん、と脈を打った。
 皮膚を食い破って、熱い血潮を啜りながら、このしなやかな身を犯しぬきたい―
 一瞬湧き上がる獰猛な衝動に、下肢の合間に甘く深い熱が押し寄せる。
 緩く息を吐いて性急な欲を散らすと、手首を上下に動かし、ぬるつくほどに溢れている先走りの液を佐助の性器全体に広げ、根元から尖端へと吐精を促すように扱き上げる。
「…あ…っ…旦那の…手…アツい…」
「…テメェの身体も程々に…アツくなってきているな…」
 胸の形を唇で辿り、皮膚を吸い上げていくと、唇は胸の尖りへと辿りつく。
 荒い粘膜に包まれた肉粒を唇の合間に挟み込むと、舌先で転がし、押しつぶす。
 直ぐに小石のように硬くなる乳首へと小十郎が歯を立てると、鋭く甘い感覚が佐助の下肢へと押し寄せる。
「…ぁ…っ……だ…駄目だって…」
 佐助は戸惑うように視線を揺らした。
「…何が…駄目だ…?」
 濡れた乳首へと浅く息を吹きかけながら、胸元から視線を浮かせ、佐助を見る。
「もう…出そうなんだけれど…」
「イけば良いだろう…?」
「…俺だけ…愉しんでいて…旦那が愉しんでない…」
「ちゃんと愉しんでいる。それに…後でテメェの身体を十分堪能させて貰うから…気にするな」
 佐助の細やかな生来の気質が言わせるのか、随分可愛い事を言う、と思いながら、小十郎は先程の喉元に食らい付く。
 幾分強めに佐助の硬く張り詰めた性器を指の間で擦り上げると、佐助は背を布団から浮かせ
「…あ…あ…ッ…!」
 眼を閉じ、小十郎の手の中で佐助は精を吐き出した。
 とろりと粘質な白濁を指に伝わらせると、吐精で緩む佐助の膝裏を片腕で抱えながら、白濁塗れの指を佐助の秘所へと差し込む。
 後孔の襞の上に精液を塗り込めながら、太股へと唇を寄せる。足の付け根の柔らかい皮膚を吸い上げる。
 白濁で十分滑りをよくさせると、人差し指を緩慢に佐助の内部へと差し込んでいく。
 硬い指の感触に、佐助は一度眼を見開くが、ゆっくりと息を吐き出し、襞を浅く蠢かせながら、後孔へと差し込んだ指を飲み込んでいく。
 眼を閉じながら、微かな喘ぎ声に似た響きを喉に詰まらせ、小十郎の指の形を感じ入る佐助の表情が伏せた視線の合間に差し込むと、視線を和らげながら、小十郎は佐助の蟀谷へと唇を寄せる。
「辛いようなら、言えよ…」
 佐助の内部の熱を指で掻き分け、最奥まで達すると、緩く指の関節を曲げる。
 肉壁の表面を指で丹念になぞり上げると、欲の膨らみの形が指先から伝わり、擽るように膨らみの表面に指を滑らせる。
「…ん…っ…だ…い…じょうぶ…」
 ぴくりと身体を震わせながら、薄らと佐助が眼を見開く。
 角度を付け、擡げ始める佐助の性器の形が見えると、膝を押さえていた手を離し、塗れそぼる佐助の性器を小十郎は指で捕らえ、緩く握り締める。
「そ…れに…止められる…のかい?」
 欲塗れの小十郎の視線と佐助の視線がぶつかる。
「無理だな…。テメェのここは…熱くて締まりが良い…」
 一度指を引くと中指を沿え、二本の指を緩やかに押し込んでいく。
 指の質量を全てを中へと入れると、手首を回し、太い関節で佐助の内部の粘膜を擦り上げる。
「…ぁ…っ…も…入れて…」
 散らばる息と共に響く強請る佐助の声が酷く甘い。
 先程からの佐助の嬌態に煽られ、小十郎の欲の芯は硬く張り詰め、堪えようの無い熱を持っている。
 直ぐにでも佐助の内部に欲の塊を穿ち、思う様に佐助の内部の熱を貪りたいと思う自らがいるが、落ち着けと深い息を無造作に流し。
「未だ…解れきれてねえだろうが…」
「キツイ…くらいが…旦那の形を…感じるから…」
 身体の前後で愉悦の場所を弄られる佐助は、小十郎の両手を受け入れやすくする為に、緩く立てた両膝を振るわせる。
 塗れた佐助のどこか必死めいた眼の表情に、眦に唇を寄せ、柔らかな口付けを送り
「…可愛い事を言う…。どうなっても知らねえからな…」
 困ったように笑みの呼気を流し、小十郎は指を引き抜くと、代わりに己の勃ち上がった性器を掴み、佐助の後孔へと宛がう。
 硬い切っ先を、塗れた肉襞の上に浅く沈ませると、佐助の両腕が小十郎の太い首へと回された。
「…好きに…してほしい…って言ったからね…。今度は…旦那を…俺に見せて…?」
 強請る声が掠れて酷く甘い。
 薄く欲の塗れた水の膜が広がる佐助の眼が灯明の光を反射させ、誘うように輝く。
 性器の熱を淡く食むように息づく襞へと、欲の芯の位置を定めると、緩慢に小十郎は肉の楔を佐助の狭い肉筒の中へと納めていった。
 予想以上の質量と熱に佐助は一度眼を見開くが、小十郎の首へと縋りつきながら、眼を閉じる。
 内部へと熱を収める為に、息を緩く流しながら、身を弛緩させる。
 内壁の鮮やかな熱と未だ硬い締まり具合に、一瞬、もっていかれそうになるのを小十郎は息を詰めて耐え
「…やっぱりきついな…」
 後孔と陰茎の接合部を小十郎は緩々となぞる。
隙間無くぴたりと佐助の内部が小十郎の欲を捕らえている事を、小十郎は確かめながら、手の中にある佐助の性器を柔らかく扱き上げ始める。
「…でも…良いよ…。旦那の形…。眼で見ているより…直に伝わってくる…」
 はぁ…と熱の篭った息を流すと、薄らと目を見開き、佐助は緩やかに背を打たせ、穿たれている小十郎の性器を煽る。
「…おい…無理するんじゃねえよ」
 小十郎の気遣いの言葉に、柔らかく笑みの息を流し、佐助は小十郎の頬の傷へと唇を寄せる。
「…平気…。動いて…」
 小十郎の指から性器へと伝わる甘い感覚に相殺され、内部の圧迫感が徐々に失せていくのを感じ取りながら佐助が囁く。
 後孔の入り口が小十郎の性器を引き込むように蠕動するのを感じると、漸く小十郎も背を浅く打たせ始め。
 微細な律動を奥へと刻み、己の肉の楔の形を佐助の深部へと馴染ませる。
 先走りの体液と内部へと塗りこんだ白濁が交じり合い、接合部から漏れるのは、淫らな粘質な音。
 擦れ合う粘膜が熱く、甘い痛みに似た愉悦が小十郎の下肢の合間に押し寄せる。
「あ…っ…あ…っ…ん」
 性器を浅く引き、前立腺の凹凸へと膨らんだ性器の尖端をぐりっと抉るように押し付けると、身体の下にある佐助が微かな声を上げる。
「すっかり…柔らかくなっているな…」
 ここ、と耳元で囁きながら、小十郎は一度腰を引くと根元まで強く太い硬い性器を佐助の後孔へと押し込む。
「…ぁ……ん…!」
 一際高い甘い声が佐助の唇から漏れ、内部に齎された感覚を追うように、身体がぴんと跳ね上がる。
 小十郎の手の中にある佐助の性器が震え、脈を打ち、蕩けるような佐助の後孔が小十郎の男根を甘く締め付ける。
「…イきたくなったら…イっちまえ…」
 耳元でそれだけ囁くと、腰をガツガツと飢えたように前後に小十郎は動かし始めた。
 己の固い肉の楔で佐助の内部を突き上げ、首筋へと唇を落とす。
 ぞろりと舌で舐め上げると耳朶を噛む。
「あ…ぁああ…!」
 耳朶から背筋へと伝わるざわついた熱に、一際高い嬌声が佐助の喉を割り、甘く響く。
 小十郎の指の筒の中で佐助の精液が弾けるのと同時、奥へと引き込む佐助の内部に小十郎はぐっとばかりに自らの男根を捻り込む。
 後孔に硬い男根を根元まで押し込むと、眼を閉じ
「…ク…ッ…!」
 奥歯で微かに声を殺しながら、佐助の最奥へと白濁を迸らせた。
 細い肉筒の中で小十郎の性器は太く脈を打ち、熱い液体で内部を満たすと、腰を揺らし、その熱を佐助の内壁へと擦りつける。
「…駄目だ…未だ…足りない…」
 一度放ったものの、佐助を穿っている小十郎の性器は萎えを知らず、変わらぬ硬さと質量で佐助の内部へと埋っている。
「…もう少し…俺に付き合ってくれ…」
 未だ欲の熱に浮かされた目を佐助に注ぎながら、小十郎は佐助の背へと片腕を回す。
 白濁を佐助の性器全体に塗りつけると、佐助の尻の丸みを掴み、己の下へと引き寄せる。
 精を吐き出したばかりの佐助の内部はぴくぴくと震えている。
 佐助は気だるく視線を引き上げ、小十郎を見ると小さく頷きを落とした。
 繋がったまま、佐助の身を引き起こす。
 布団の上で正座をする形になった己の膝の上に佐助の尻を引き寄せると、内部に埋め込んだままの小十郎の性器が角度を変え、ぐりっと内壁を抉り、佐助自らの重みで深く繋がり合う。
「…あ…あ…ぁ…っ…!」
 身体を貫く鋭く甘い刺激に佐助の背が反り、小十郎の腕の中で跳ねる。
 深く、小十郎の性器へと串刺しにされながら、収めたままの肉の楔を、窄まりは締め上げる。
「未だ…足りねえって言っているな…」
 ここ…と尻を掴んでいた指で、佐助の尻の合間を指で辿る。
「…もっと…ほしい…」
 散々上げた嬌声で佐助の声は既に枯れていた。
 片腕を佐助の背へと回したまま、小十郎は膝を軸に佐助の身体を上下に小刻みに揺らす。
 片手は再度佐助の性器を包み。
「…何が…だ…?」
 目の前にある佐助の胸の尖端に小十郎は唇を寄せる。
 舌先でねっとりと乳輪ごと乳首を舐め上げながら、視線を上へと向け
「…ん…っ…あ…旦那の…硬くて…太い…もの…」
 硬くしこった乳首を舌先で弄っていると佐助が身を捩る。
小刻みに佐助の内部に律動を刻みながら、甘く乳首へと歯を立てる。
胸と身体の奥と性器の三箇所を同時に弄られると溜まったものではなく、佐助は身を震わせ、背を捩る。
手の中にある佐助の性器が三度熱と硬さを取り戻すと小十郎は扱く手の動きを早めた。。
 ぐちゅぐちゅと塗りこんだ互いの精液で接合部からは濡れた音が絶えず流れ、小十郎の精液が佐助の内壁と小十郎の陰茎を伝わって佐助の後孔を濡らす。
「…は…おか…しく…なりそう…」
 のぼせる…と揺れる眼差しで小十郎を見ると、胸の尖りを吸う小十郎の髪へと佐助は唇を寄せ
「…口を…合わせて…?」
 小さく強請る声が響くと、小十郎は胸から顔を上げる。
 佐助の両手が小十郎の顔を包み込むと、唇を深く重ね合わせた。
 舌を絡め合い、口を深く吸い合わせていれば、小十郎の性器を佐助の秘所が奥へと誘うように引き込む。
 律動を送るのを止め、肉の楔を強めに押し込むと、小十郎の手の中で先程よりも薄いが熱い体液が掛かる。
 腰を回し、内壁の熱を陰茎で掻き混ぜると、互いの咥内を犯したまま、小十郎は佐助の内部へ精を注ぎ込んだ。
深く合わせた咥内の熱を貪りつくすと 緩い息を流し、唇を浮かせ
「……無理…させたな…」
 どちらのものともつかない唾液で濡れきった唇で小十郎が囁く。
「…へい…き…って強がりの一つ…も言えると…良いんだけれど…」
 無理だと言葉の中に暗に示しながら、途絶え途絶えに佐助が声を流す。
 未だ硬く、萎えていない小十郎の性器が内部で漸く引き抜かれると、佐助は一息吐いた。
 障子戸の隙間から見える空は一際黒々とし、夜の深い沈黙が、再び戻ってくる。
「少し…寝ていろ。後は俺が始末をする」
「…半刻も眠れば…直ぐに動けるからね…大丈夫…」
 柔らかく笑みを唇に立ち上らせ、佐助は惜しむように、小十郎の身を引き寄せる。
 互いに重ねあった肌の温度を確かめるように眼を閉じる佐助の表情を見ると、小十郎は細い背へと腕を回し
「…奥州方向に用事がある時は又、立ち寄れ…。一晩の褥くらいは用意出来る」
 約を一つ、都合に交え、小十郎は囁く。
 上掛けの布を掴み、引き寄せると、情事に疲れた痩躯を己が身の温度で癒すように、己の身と布で封じるのは、手放したくないと感じる不意に湧き上がった欲。
「…旦那の腕の中だと、眠るだけって訳にもいかなさそうだけれどね」
 微かに佐助が笑うと静かになった。
 穏やかに眠る佐助の顔を小十郎は黙して見つめながら、乱れた髪を掻き分け、額へと唇を落とした。

 その感情に「恋」という名を付けられる筈も無かった。
 それでも手を伸ばさずにはいられなかった。
 だが手の中にのこる温度だけは、確かに或る。
 それだけで今は―充分。

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